『若恋』短編集1【完】
奏さんの写真
丸眼鏡さんが持っていた手帳に挟んであった写真。
現在より少しだけ若い奏さんと、西中学の制服を着た少女のツーショット。
仏頂面の奏さんとは違い、満面の笑みで奏さんの側に立っていた。
「丸眼鏡さんの娘が生きてたらどうしてたかな…」
「あ?」
キッチンに立ってカレーを作っていた時に突然丸眼鏡さんの写真を思い出した。
奏さんはわたしの考えてることなんて知るはずもない。
「丸眼鏡さんの娘さんを写真で見たけど可愛かったよね」
「あ?…まあな」
「奏さんの隣にいつもいたの?」
「いつもじゃないが、…気付くと居たかもしれねえな」
ソファーで背筋を伸ばしてそれがなんだ?っていう顔をして振り返った。
「生きてたら彼女はいくつなのかな?」
「…17歳。高校二年、だったかな」
奏さんが話す横顔には一瞬だけ翳りが見えた。