『若恋』短編集1【完】
「あの写真に『大好きな奏さんと』って書いてあったね」
「………」
奏さんは丸眼鏡さんの娘の話には触れたくないように見えた。
だけど気になるの。
知りたいと思う反面知りたくない気持ちもあるの。
「出会いは山田児童公園だったな」
「え?」
「知りたそうだから教えてやる」
乗り気ではないような素振りに聞いていいものかと悩む。
どうしようかと思ってるうちに奏さんがソファーから立ち上がってキッチンの中に入ってきた。
「俺は女に不自由したことはなかったし、どうでも良かった」
「………」
「聞きたくないなら耳を塞いでもいいぞ」
「………聞く」
「彼女は丸眼鏡の娘、向こうの若頭の嫁候補だった」
重く吐き出したことばは、龍神会に乗り込んだ時にみた奏さんと似てる男が重なった。
「あのひとの?嫁候補?」