『若恋』短編集1【完】
「時々、公園の中で見かけた少女が話しかけてくるのをウザイってずっと思ってたな。
だけど俺を怖がらない女がいるのも正直嬉しかった。他愛のない話をしてくれる時間はあっという間に過ぎていった」
瞳を反らさずにわたしの前に立ち、壁に追い詰めて腕を両手で縫い止める。
「りお、嫉妬してんのか?」
「ちがっ」
「じゃ、なんでいきなりそんなこと聞きたがる?」
首筋に寄せられるくちびる。
「嫉妬してんだろ?」
「嫉妬?」
違うよ。
わたしはただ、その少女が生きていたら奏さんの側にいたのはわたしじゃなくて…
あ。それを嫉妬って。
言うのかな?
奏さんの瞳がゆっくりと近づく。
「俺にはおまえしか見えない」
「………」
「―――俺にはりおしかいない」