『若恋』短編集1【完】




険しい横顔が見えたと思ったら、奏さんがナイフを持った男の真ん前に立った。


「俺がバカならおまえらはなんだ?」


ぐっ!



ナイフの刃を掴んだ。



「奏さん!」

思わず悲鳴を上げた。

掴んだ刃からポタッと血が。



血が!!



「これで刺してみろよ。刺せるもんならな」


ぶるぶる震えだした男の目の色が変わった。



「やめて!奏さんがっ!」


飛び出しかけて榊さんの背中に阻まれた。


「りおさん、行ったらダメです」

黙って観ててください。



「俺を刺せるなら刺してみろ」



奏さんの手のひらが溢れた血で染まっていく。



「どうした?刺せないのか?」



青ざめた男が震える手をナイフから離した。

今にもひっくり返りそうだった。


「こいつ狂ってる…」


半歩下がってドスンと尻餅をついて、ずりずりと後ろに下がる。



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