【短編】優しい、嘘つき
「――――入るよ、砂雪(サユキ)」
軽いノックの音の後に聞こえた声に、私は振り返った。
頭の上に乗せられたティアラが、キラリと光る。
振り返った先に立っている人物の目が、心なしか見開かれた。
「……ビックリした…まるでべ…」
「別人?」
「うん」
「もう…」
ふて腐れて頬を膨らますと、ゴメンゴメンと笑いを噛み締めながら近づいてくる足音。
「拗ねないでくれ」
そんな言葉と共に、後ろからふわりと抱きしめられた。
視線を落とせば、首に回される真っ白な服に包まれた腕。
「…真(マコト)さんが悪いのよ?」
「分かってるって」
苦笑しつつ私の耳元で真さんがもう一度謝った。
回された腕にそっと手を重ねる。
「じゃあ…キレイだって言って?」
甘えた声を出す私に、真さんは短く息を吸ったきり言葉をなくした。
ビックリしてる…
くすりと笑い、真さん?と呼びかける。