ケダモノ、オオカミ 時々 王子
さっきから私の後着けてきて、友達いない感丸出し。
「いーの。澤田さんと話したい」
「私が面倒臭いの」
中嶋はシュンとして教科書を握りしめる。
「本当はあたし、友達いない。だから、仲良くしてくれないかなぁ?」
「はぁ…勝手にすれば?」
同情買うような事言いやがって。
「りぃゆちゃん。市花だよ」
「…呼べって?」
「友達だもん」
やっぱり友達とかいんないや。
ぼんやり廊下を歩いていると、キラキラと華やかな人達が向こう側からやって来る。
そのうちの一人はどこかで見覚えがある。
んー、どこだっけ?
「あれ?コーヒーの子?」
「コーヒー?」
話しかけてくる金髪の男性。
フワフワの髪、高い身長。
コーヒーの香り。
「あっ、裸の…」
「「「裸ぁっ!?」」」
周りの女子と、市花が過敏に反応する。
「ちょっと李由ちゃん、は裸って。どうゆうこと?」「あんたら馬鹿だね。たまたま着替え姿見ただけだし」
「あんた何様?立郁の着替え姿見るとか重罪だし」
強気な女共が、私に詰め寄る。
もちろん私は無視して教室に入る。
付き合ってらんないし。
「ねぇ違ってたらゴメン。あんた、悠一の妹?」
私の大切な兄、悠一。
何故彼は、お兄ちゃんを知ってるの?
「俺、悠一の幼なじみの立郁。李由だよね?」
市花も、うざったい女共も石のように固まってる。
多分彼は、人気者の一人なのだろう。
だから彼女等はこんなにも、怒ったり悲しんだりするんだ。
しかし私には関係なしっ。
それよりも今大切なのは、こいつは誰なのかということ。
「ちょっと話さない?」
「賛成」
手を引かれてあの隠れ家まで行く。
登校初日に、サボりとは感動的。
「俺、1のAの狭山立郁。悠一とは19年間一緒にいた」
「まって、じゃあ1年生じゃないじゃん」
「留年」
狭山がウインクして答える。
真面目なお兄ちゃんにこんな友達がいたなんて驚きだ。
「私授業戻りたい」
「サボろ」
こんなことしてるから留年になるんじゃん。
でもこいつ、私の事逃がす気ないみたいだし?
「思い出作りしよ?」

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