恋愛電車。
第1章

視線の彼

今日は会えるかな。
占いでは恋愛運はよかったもん。


あたしはドキドキと高鳴る胸を落ち着かせると、ゆっくりと電車に乗り込んだ。


キョロリとあまり混んでいない電車内を見回して、彼の姿を探す。


そして、見つけた。
彼の横顔を。


いつもの制服姿で、いつものように外を見つめている。

私は平然を装い、彼の姿を見ることのできる場所へ移動する。


毎朝、必ず会えると言うわけではない。
車両が違ったり、時間がずれれば会えない。


初めて彼を見たときは『カッコいい人だな』程度にしか見ていなかった。
混んでいたら座れない老人の人に席を譲ったり…


なにより、そんな時に見せる明るい笑顔に惹かれた。


彼の姿を見ることが、
今の私の生き甲斐なのでは?と思ってしまうほどに。


もちろん、彼のことは何も知らない。


名前も、学校も、年齢でさえも。

あまり学校に詳しくない私は、
制服ぐらいではどの学校の生徒かもわからないし…


携帯を意味なく開いて、視線を向ける。
怪しくないように…。

だけど、彼の姿もちゃんと視界へ入れる。


…あ、今、欠伸した。
とか、彼の無意味な観察。


別に話したり出来なくていいの。
こうやって見ているだけでも幸せだから…。


眠そうに目を擦っている姿。
…かわいいな、なんちゃって。




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