毎日がカレー曜日2
「右から」
直樹は急ブレーキをかけ、指定のコンピュータの方へと方向転換。
その勢いに、背広があおられる。
「3番目!」
手袋の手を伸ばした。
刹那。
ヒュンッ。
白い影は──消えた。
何事もなかったかのように、光を取り戻す店内。
時間は変わらず動いていたというのに、動きを止めていた人々が、再び活動を始める。
怪しい表情を、みな隠しきれてはいなかったが。
「気配が……消えました」
サヤは、自分が悪いわけではないのだが、申し訳ない気持ちを拭えなかった。
いつまでも、そこにとどまってくれる霊ばかりではないのだ。
それに、もっと早く気づくべきだった。
「孝輔」
彼は振り返り、サヤではなく弟の方を見る。
名前を呼ばれた本人は、無造作に端末をしまおうとしていた。
その唇の端が、にぃっと上がっていく。
あ。
サヤの好きな笑顔だった。
心底嬉しい時の顔。
「ギリギリセーフ…老体にムチ打った甲斐があったな」
言葉は曲線だったが、彼の声は気持ちを隠しきれていなかった。
サヤも嬉しくなったので、真似しておんなじように笑ってみる。
ただ一人、直樹だけはそれに加わらなかった。
「老体とはなんだ! 私は28だぞ!」
ぜーぜー。
そういう割には、呼吸が乱れている直樹だった。