毎日がカレー曜日2
「パソコン、電子レンジに洗濯機、電気スタンド、エアコン…」
孝輔の読み終えたところを、繰り返す声があった。
ゆっくりとした女の声。
サヤだ。
顔を上げると、また考え込んでいる。
「無理すんな」
またへこんでいくんではないかと思って、先手を打ってみる。
資料をしまおうとすると、その手を止められた。
「何か、思い出せそうなんです」
食い入るような一生懸命な目。
「何か共通点がありそうなのに……」
じーっと孝輔の手の中の書類を覗き込むものだから、きづいたらサヤの顔がすぐそこだ。
少し離れていても、彼女の存在はすぐにわかる。
いつも、何かのスパイスの香りがただよってくるのだ。
彼女の住んでいるインド料理店そのものに、香りがしみついているのだろう。
よく灼けた肌も、最近ではあまり見ない。
不自然な焼け方ではなく、ずっと強い日差しの下で暮らしていた黒さだ。
孝輔は、どちらかというと色白の女性の方が好きだったが、サヤの肌の色は気にならなかった。
それどころか、白いブラウスとの対比が鮮やかで──目を奪われる。
「共通点って…」
スパイスの香りに、あてられたのだろうか。
言葉を出そうとする自分の呼吸が、少し乱れた気がした。