毎日がカレー曜日2
「ちっと、デパートでテストしてくる」

 孝輔は、兄にそう言い置いて事務所を出ようとした。

 その途中で、サヤと鉢合わせる。

 興味深そうな目だ。

 さっき、彼が端末で物凄い勢いで打ち込みをしているのを見ていたのだろう。

 何か話しかけられたような気もするが、没頭していたために返事をしたのかしてないのかも覚えていなかった。

 えーっと。

「……来る?」

 試しに聞いてみると、ぱぁっと明るい笑みに変わった。

「はい!」

 誘われて嬉しくてしょうがないみたいだ。

 効くなぁ。

 太陽光線ばりのそれに、孝輔は胸が疼いた。

 何とも複雑な気分だ。

 一番ひどい古傷を、思い出したせいだろうか。

「あ、帰りにデパ地下で、キアラのシュークリームを買ってこいよ」

 孝輔の気持ちも知らない兄から、暴君的な指令が飛んでくる。

 そんな店を、彼が知っているとでも思っているのか。

 舌を出しつつ、サヤと事務所を出た。

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