毎日がカレー曜日2
 事務所に戻って、テストの結果も含めて最終的な打ち合わせを始めた。

 直樹はシュークリーム2個を、サヤは1個を頬張りながらの、緊迫感のない風景の中、孝輔一人が眉間にシワを寄せて難しい顔だ。

 ちなみに本当は一人1個ずつだったらしいが、孝輔がいらないと拒否したために、直樹の口に二つ入ることになったのだ。

 二つもシュークリームを頬張っているというのに、直樹は非常にご立腹だった。

「それでは、私が目立てんではないか!」

 箱ティッシュから素早く2枚ほど引っ張り出し、兄は口元をぬぐう。

 しかし、頬についているのには気づいていないようだ。

 我が兄ながら、情けない。

「オレが考えた計画に文句があるなら、代替案を出せ」

 ギロリと睨みつけながら、孝輔は兄に詰め寄った。

 目立てる目立てないだけで仕事が遂行できるなら、計画なんかはいらない。

 彼の立てた計画は、こうだった。

 デパートに併設されている商品倉庫を借り、その中の広いスペースを確保してもらう。

 電気機器類から十分に距離を取る。

 天井の蛍光灯までは元々床から2メートル以上あるので、テーブルの上などで作業しなければ大丈夫だろう。

 デパート側に問い合わせ、倉庫の床下に電気系統の配線が走っていないところまで確認する徹底ぶりだった。

 エサである端末は、延長コードなどで電源を確保し、スペースのど真ん中に据える。

 グレムリンが端末に食いついた瞬間、延長コードを断ち切り、ケーブルは素早く回収(端末はバッテリーでも動作するようにしておく)して、逃げられない隔離状態を作成する。

 あとは、端末にあらかじめ仕込んでおく、S値を自動で下げるプログラムを起動させる。

 うまくいけば、これで退治できるはずだった。

 要するに、直樹が手袋をはめて、レッツ・ショータイム、する隙間はどこにもない、ということだ。

 大体。

「あのすばしっこいのと、追いかけっこしたいのかよ」

 まともに、正面からやりあおうというのが無理なのだ。

 直樹の望む形では、デパート中を走りまわらなければならない。

 無茶にもほどがある。
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