毎日がカレー曜日2
「早く、代わりの手袋作れよ! いますぐほれすぐ!」

 ニヤリを見られたのだろう。更に、直樹のイビリが続く。

「予備があんだろ! ちゃんと!」

「あれ固いからヤダ」

 ただ、弟をいびりたいだけで、わがままを炸裂させる眼鏡。

 くそー。

 結局、手袋をまた作らされることになった孝輔は、ニヤリの気分も台無しにされて、作業に入ることになった。

 机の上に部品を沢山転がすと、グレムリンが興味深げに寄ってくる。

 そしてなぜか。

 にこっ。

 サヤも寄ってくる。

「グレちゃん…捕まえてますね」

 そして、びびることなくうごめく手袋を、自分の胸に捕まえるのだ。

 うらやまし…いやいや、何を考えてるんだ、オレ。

 精密ドライバーを指先で回しながら、あわてて頭をよぎったそれを追い払った。

 機械の方に行きたそうな手袋が、サヤの胸でジタバタとしているのが、目の端に入って台無しになる。

「アイアイ」

 だから。

 孝輔は、視線をそらしながらそう言った。

「はい?」

 きょとん、と。

 サヤが返す。

「そいつの…名前」

 名づけ親は――サヤ。

「あ! よろしくね、アイちゃん」

 ぱぁっと、サヤの表情が明るく弾ける。

 一瞬で、何ワットも跳ね上がる明るさだ。

 そらしていた目さえ、ひきつけられる瞬間。

「ヲタクは、すぐ道具に女の名前をつけたがるな!」

 即座に邪魔に入る直樹に、すべて台無しにされるのだ。


 我関せず。


 グレムリンこと、『アイアイ』だけが、サヤの胸から逃れようと、もがいているのだった。

-- 終 --
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