真理子の人生
私に滝川の血が流れているのではないか。

私は家に帰るなり、ノートに思い当たることを箇条書きにした。

・滝川親父、滝川息子、私の三人の名前に「真」の文字が入っている(私の名は母でなく父がつけている)

・滝川親父は、母のスナックによく通い相当な金額をおとしてくれていた(なぜわざわざ『ホイホイ』に来たのか?)

・滝川親父の血液型はA型、私の母はAB型で、私はAB型。血液型ではありえる

・私が滝川息子に犯されたことを母に言ったときの母の目(あのときの目は、怒りでも悲しみでもなかった)

・以前、滝川親父が私に「真理子ちゃんのお父さんはどんな人やろなあ」と言ったときに、母があからさまに滝川親父を睨みつけていた

・滝川の母、すなわち滝川親父の嫁が一度スナックに怒鳴り込んできたことがある(私は会話の内容は覚えていないが、母と激しく言い争っていた)

・滝川親父と私はかなりの酒豪である(だがビールは飲めない)

このようなことをいくつも羅列した。

どれも決定的ではないが、おそらく間違いないであろう。

私は確信した。

私の父は滝川親父である。

誰の娘であってもなんら自慢にならない。

誰の娘であってもなんら恥じることはないない。

私に誰の血が流れていようと、これからも私は私の生き方をするだけである。

それが真理子の人生なのだ。






おしまい
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