言葉にしなきゃ伝わらない。
夜風が、夏の香りと虫の鳴き声を一緒に包み優しく吹きつける。



「何でかって?俺は、あんたの事だったら何でも分かるねん!やから俺には何でも喋ってみ?・・・あ、そんな事言うても喋れへんのやったな....ごめん」


少し眉をゆがめると、女の子の瞳から一筋の涙がこぼれた。



『ありがとう』


そう、口を動かして....




それから、さっきよりも強く俺の服を掴んで



声も出さず...ただ、静かに泣いていた。



いろいろな思いが交差して


いっぱいいっぱい溜めこんで


涙を流せなくなる。



あんたも・・・そうなんやろな....




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