言葉にしなきゃ伝わらない。
私は物分かりがいい、良い子じゃないよ。

頭も良くない。

この世界を変えれるような・・・そんな大それた力も無い。




・・・もし

私が、そんな力を持ってたら...“あなた”の傍にいれますか?

虐待を受けて無くて・・・どこにでもいる、普通の女の子だったら...あなたの傍にいれてますか?

“普通”も、分からない。“現実”が、怖い。



・・・そんな私じゃ無かったら、優心と...ずっと一緒にいれてた?





地面に生えている芝生を力いっぱい握りしめ...ちぎった。



どう、この感情を出せばいいのか・・・喋れない私には、バカな私には分からない。


手の中にある、数本の芝生の束。


少しだけ、草の香りと夏の夜の香りが混ざり私の鼻をくすぐった。



―――そして。


私は意を決したように唇をかみしめた。






「・・・美月!?」


優心が驚いたように目を見開いた。


私がいきなり、立ったからだろう。


涙が出そうな瞳を必死に我慢し、片手に芝生を握り締め...私は優心に芝生を投げた。



ふわっと優心の顔にかかり、ゆっくりと風に乗り落ちていく。




「・・・・美月、怒っとるよな?...そんなん、知っとる。美月の顔見たら、すぐ分かるわ。・・・・でもな・・・・俺はこれ以上...美月の傍にいたら・・・・」




“美月”


そう優しそうに呼んでくれる、“あなた”が好き。


切なそうに顔をゆがめて必死に涙を堪えている“あなた”が愛しい。


ちゃんと私の目を見て話してくれる・・・・優心が私は大好きなの。






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