言葉にしなきゃ伝わらない。
どうして・・・・世界はこんなにも叶わない願いで溢れているの?


止まらない...止まれない...私が優心を好きな気持ち。


どんどん大きくなって、気付いたころには・・・もう、取り返しがつかないくらい大きくなってた。



「ごめ・・ん。・・・ごめんな・・・美月。」

男のくせに...なんて、思わないよ。


もう・・思わない。

それだけ、私を好きな気持ちがあるって・・・離れたくないって思ってくれているんでしょう?



その想いだけで、私は・・・十分だから。




必死に涙を拭いて、でも、また溢れて来て流れて...。

そんなことの繰り返し。


泣いても、この状況はだれがどうやって変わらない。



もし・・・この場で私に声が出せたら...もう、大満足なのにな




夏の涼しい風が、ゆったりと流れ始めた。

さっきまでは、冷たくて・・・激しかった風は、今はどこか力を無くしているようで。



ほんと・・・私の心模様を表したみたい。


くすっと笑って、優心の目線に合わせ、しゃがんだ。


トンッと肩を叩いたら、優心は涙で真っ赤になった瞳を私に向けた。



『優心、大好きだよ。今まで、ありがとう』


一文字ずつ、ゆっくりと口を動かして伝えた。


そして、携帯をパタンッと閉じて優心の手元に置いた。



その一連の動作を、ただただ見ているだけの優心。




少し間を開けてから、勢いよく立ちあがって月見崖を後にした。

後ろは振り向かない、と決めて前方だけ見据え必死に走る。



優心・・・ただ、あなたにそれだけ伝えたかったの。


心の中で何度も...何度も...その言葉を繰り返した。






夜中の風は、どこか生ぬるくて、安心できる。


木々の音がザァッと耳をかすり、耳を押さえた。


< 76 / 144 >

この作品をシェア

pagetop