言葉にしなきゃ伝わらない。
胸がざわつく。どこか落ち着いていられない。

中学生なんて数えきれないくらいにいるのに・・・。


頭の中から消えない...ある人の顔。



そして、お客さんはペラペラと話を続ける。


「多分・・・夜中だったと思うんですけどね。私も、くわしくは分からないんですけど...人から聞いたもので。中学生の・・・男の子だったと思います。確か名前は・・・」


そう言って、少し間が空いて考え込むような素振りを見せた。



夜中...中学生...男の子・・・。


たった1人、浮かぶ・・・あの顔。

今までの条件にすべて当てはまる。




でも、まだ・・・まだ、分からない。




本当に私は、この話を聞いて良かったのだろうか?



後戻りは許されない、聞いてから後悔したって遅い...そんな事、自分が一番分かってるはずなのに....。

足が動かないのだ。



怖いとかじゃなくて・・・・もっと別のもの。



胸のあたりを押さえ...審判を待つように、そっと祈った。


お願いします・・・どうか...どうか...違う人であってください。


ぎゅっと強くまぶたを閉じ、一気に暗くなる。




「あぁ、思いだしました!!!陽向....さん、だったような。・・・そう!!優心君!!!」


大きくはじけるような声。


「陽向・・・優心・・・くん?・・・すみません、聞いたことが無いです。その、優心君は、夜中にどこで?」


暗く重い声。きっと演技だろうけど。


「月見崖ってあるじゃないですか、このあたりの有名スポット!何年か前までは、栄えてたんだけど・・・最近じゃ人っ子1人いないんですよ。崖もありますし・・・自殺するには丁度いい場所ですよ~アハハッ」


甲高い、バカにしたような声。





すべて・・・すべて・・・


夢みたいに思えてくる。
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