スカイ
空を見よう。
そう思った。
先生たちももう寝ているみたいだった。
こっそり、裏の出口から外に出た。
扉を開けると、冷たい空気が体を包んだ。
暗闇の中、すぐそばにあった大きな岩に腰掛ける。
そのまま空を見上げた。
私の知っている、街の中で見る夜空とは全く違った。
黒の背景に無数にちりばめられている光。
降ってきそうな星たち。
少しだけ気持ちが和らいだ。
「………市川?」
遠くから声が聞こえた。
そのほうを見る。
誰かが、こっちに歩いてきた。
目をまん丸にして驚いた顔の…
「前田くん?」
「え、なん、で…ここに…。つか…なんで泣いて…」
「え」
頬に手を当てると、濡れていた。
気付かなかった。
いつの間にか、泣いていた。
急いで目をこする。
でも、すぐ涙がにじんだ。
すると前田くんは、私の隣に座って
「空、きれいだな」
そう言った。
「…うん」
何も聞かないでくれた。
優しいな。
単に無口だからなのか、分からないけど。
しばらく沈黙が流れた。
沈黙は苦手なはずなのに、なぜか心地よかった。
でも、沈黙を破ったのは前田くんだった。