スカイ

「落ち込んだ時は、空、見るといい」

ぱっ、と前田くんを見る。

顔が赤かった。


『悩みがあるなら
 苦しんでいるなら
 落ち込んでいるなら

 空をみなさい』

あの、詩の本に載っていた言葉。

もしかして、前田くん…慰めようとしてくれてる?

私は顔を真っ赤にしている前田くんを見て、なんだかおかしくなって笑った。

確かあの詩の背景は、ブルーのきれいな空だった。

「ありがとう」

そう言うと、前田くんはもっと赤くなった。

「俺は…夜空も好き…だから」

前田くんは、顔を赤くしたまま空を見上げた。

私も顔を上げる。

「うん、きれいだね」

なんだか、さっきまであった心の黒い渦は、どこかへ行ってしまったようだ。

ふっと心が軽くなった。

「ありがとう」

もう一度、そう言った。

前田くんは、優しく笑ってくれた。



しばらく、2人何も話さずに、空を眺めていた。

今は何時なんだろう。

どれくらいの時間が経ったんだろう。

分からない。

でも、それでもいい。

ずっとこんな時間をすごせたら、いい。


「…そろそろ帰ろうか」

でも、そんなこと出来ない。

「そうだね」

少し寂しさを感じながら。

お互い部屋に戻った。

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