スカイ







朝、私はクラスで一番遅くまで寝ていた。

あれからすぐ寝れたのだけど、やっぱり寝不足だった。


今日は、川で鱒掴みをして、もうバスで帰る。

せっかく来たんだから最後まで、楽しもう。



昨日のことは忘れて。






鱒掴み。

学年全体で集まる。

もちろん、あいつもいる…。

癖で、姿を探してしまう。

そして見つけてしまう。

胸がズキ、と痛む。

バカだなぁ私。

見なきゃ、いいのに。


それでも

目で追ってしまうのは

まだ……癖が抜けてないから。



「…優音?」

由香の声にはっと我にかえる。

「大丈夫?鱒、逃げちゃうよ?」

「え、あっ!」

手の中から鱒が元気よく飛び出ていった。

ぴちゃん、と水に入っていく。

「あーあ、残念。ほらっ、次探そ!」

「…うんっ」

由香が、余計なことを私が何も考えないようにしてくれてるのが、分かる。

「…由香」

「ん?」

「ありがと」

無意識に出た言葉。

伝えたく、なった。

由香は優しく微笑んでくれて。

私の手を引いてくれた。



ありがとう。

そういえば私、昨日からずっと「ごめんね」しか言ってなかった。

「ごめんね」じゃないね。

「ありがとう」だね。


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