メイドは見た!
第一話(萌架side)
私は柏原萌架。
間宮家でメイドをさせていただいております。
実は私、職場恋愛をしておりまして…
お相手は同じく間宮家で執事をしている芦田豹さんです。
間宮家のお嬢様は専属の執事がいるにも関わらず豹さんをとても気に入っておいでで、いつもなにかあるごとに呼びつけます。
恋人の私としてはなんとも腹立たしいことです!
しかも豹さんはお嬢様に優し〜く接するので、余計ムカムカいたします!
まぁ、それが仕事なのでね…
私も割りきらなければなりません。
「豹ぉ!」
ほら…
また呼びつける…
「わたくし足が痛いの…おぶって行って下さらない?」
「はい。お嬢様。」
そう言ってニコリと笑う。
あぁ…その笑顔は、私にしか見せて欲しくなかった…
当然のように豹さんはお嬢様をお姫様だっこします。
私には…して下さらない…
辛くなって目をそらした。
でも気になって見てみると…
お嬢様は私に、勝ち誇ったような顔をなさっていた。
悔しい…
ですが私は雇われている身ですのでただお嬢様の顔を無表情で見ることしか、できないのです。
私たちメイドと執事の部屋は防音になっております。
お嬢様が私たちの生活音をお聞きになって眠れなくなるのを防ぐためです。
それゆえにベッドの上の豹さんはとても大胆なのでございます。
でもそのお嬢様には見せない妖艶な顔…
それを見るたび
私は豹さんの特別なんだ…
と思い、
あなたは豹さんのこんな顔、知らないでしょう?
とお嬢様に言いたくなるのです。
悔しさはやがて…憎しみとなる…
誰かが私に言いました。
この言葉を身をもって思い知るなんて…思ってなかった…