激甘カレは超セレブ
「ちょい待ち、ちょい待ち~っ!近いっ!もうちょっと離れよう?」
急接近している顔をグイと押す。
あたしは今、彼の懐に納まってしまっていた。
忍者も顔負けの早業。
「冗談ですよ、メキシカンジョーク。照れた顔も可愛いですね。」
涼しい顔してなんて毒を持ってるんだ!
メキシカンジョークなんて生まれて初めて聞いたわ!
次はなんだ?
手裏剣でも飛ばしてくるつもりか?
そもそも年上に向かって可愛いだなんて、可愛いだなんて………。
くそっ
嬉しいじゃないか。
どうやったらこのF1バリの血流を抑えられるんだ?
どうしても弛む頬。
………この新入社員の好青年、とんだ間者だわ。
「あたしは何者にも屈しないっ!!して堪るもんですか!!
行くわよ、あたしは。」
勢いよく頭をブンブンさせて、意識を正常にする。
無職のプータローになんかなれない。
そう告げて。