水恋
プロローグ
私は木ノ下李津。
今月華々しく、広陵高校の一年生となる。
「ねぇ、君。駅てどう行くの?」
若い、ちょっとおしゃれした女子大生2人組が私に聞いた。
「駅は、ここの道を真っすぐ進んで、突き当たりで、右に曲がれば見えますよ」
「そうなんだ。ありがとぉ」
「いえいえ」と私は答えて、きびすを返して帰ろうとすると、「ねぇ」と引き止められた。
「なんですか?」
私は、振り返る。そこにあったのは、ニコニコした女子大生の二つの顔。
きっと、自分たちの中で可愛いと思ってる笑顔で、二人は私にこう言った。
「ね、教えてくれたお礼にどっかでお茶しない?せっかくだしさ。」