水恋
「えーっと、吉高。うん。じゃあ、ストップ言ってくれよな」
先生は言った通り、目をつぶって席順表の上で指を動かす。
それをじーっと見守る生徒達。
なんとも滑稽な光景だろう。
「ストップ」
克弥の声が教室に響く。
同時に、ピタッ、と指の動きを止める先生。
そして、自分が指差している生徒名を見る。
みんなシーンと静まり返る。
どうか、当たっていません様に。
そんな気持ちが、一人ずつ生徒の上に浮かんでいる。
「えー、一人目はまず……木ノ下」