毒舌メイド 【完】
お母さんの声を背中に私はリビングから出て、畳のある部屋に行く。
そこは、この家にある唯一の和室で……唯一、私が本音を出せる場所。
私は我慢が出来なくて、そこで顔を歪めた。
視界が涙でぼやけ始めた。
「お、おばあちゃん……ちょっとだけ…少しでいいの。泣かせて……」
震えそうになる声を抑える。
おばあちゃんはニッコリ笑って、私の方に両手を広げた。
今まで耐えていた物が溢れて来て、頬を温かいものが伝う。
「う、ぐっ……ふ、…うぅっ…」
おばあちゃんは、お父さんと入れ替わるようにこの家に来た。
認知症を装って……私を守るために。