*あおいきといき*
『…山中。
お前今なんて言った?
人を嫌な気持ちに
させるような事を簡単に
言うヤツは最低だ!!』


可愛い顔を怒りで
歪ませながらそう言う
高橋君は今まで見たことない
ぐらい怖い顔をしていた。


『えっ…晴斗…
いやっ!!違うの…。
そういうつもりじゃ…。』

山中さんの目には
涙が滲んでいた。


『山中にはそういう最低なヤツになってほしくないんだ。

でも俺ちょっと
怒りすぎたよな?
ごめんな?』


少し悲しげな表情をしながら
山中さんのミルクティー髪を
高橋君は優しく撫でた。


『んーん。
晴斗が謝る事じゃないの。
詩織の軽率な行動が
いけないの。

ぐすっ…
竹内さんごめんね?』

山中さんは我慢していた涙を
堪えきれずに
泣き出してしまった。



彼女が泣き出した事により
オロオロしながら、それでも
優しく頭を撫でてる彼。

彼に頭を撫でられながら
ワンワン泣いている彼女。


そんな2人を見ていると
まるでドラマを見てるみたい。

私は人前で泣いた事がない。
私は泣くときは1人であの暗い部屋にとじ込もって泣く。

家にいるのは私だけなのに
それでも誰にも泣き声を
聞かれないように
唇を痛いぐらい噛み締めて。



それに頭を撫でて
もらった記憶もない。
物心ついた時から
施設にいた私。

施設には私より小さい子が
たくさんいた。

私はそんな皆のお姉さん。
甘える事もせず、
泣きつづける子を懸命に
あやす毎日。



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