嗤う布団
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長方形の敷布団を、まるで結界のようだ、と思ったことはないだろうか。
寝入ろうとした瞬間に思い付いてしまって、何か不穏なモノを感じとった様に、ぶると身体が震える事が、ないだろうか。
今の私のように。
こんな時は、理性なんてよりも恐怖が支配し始める。
毛穴という毛穴が開いて、おぞましさがニタリニタリと入り込もうとしているかに感じてしまう。
シーツが柄物であればそんな事もないのだけれど、よく糊のきいた白いものであったりしたら、もういけない。
敷布団の四辺は、己の存在する世界と異世界との、境界線なのではないか……と、感覚がきょときょとしてしまう。
明るい時ならば、そのような恐ろしさなどなくて。
眩ゆいほどに白く清潔なシーツにくるまり、大の字になって、手足を布団からハミ出させて堂々と寝る楽しみに、頬を緩ませるだろう。
何かが起こるかもしれない、なんては、これっぽっちも過ぎりすらしない。
誰かが「布団は結界なのだ」と至極真面目な顔をしながら、「布団から出た部分がどうなっても知らないぞ」などと怯え震えていたら、ふん、と鼻で笑う事さえしてやる筈だ。