嗤う布団
しかし今日は、夜が更け明かりを消し、真ん中に寝転がった瞬間から、布団に囚われる様な感覚に、ぞわぞわと背筋が寒くなった。
まるで、ここから決して出てはならぬと、布団が語りかけてくるかの様で。
私は身体をくるりと丸めながら、気のせいだと自分に言い聞かせる一方、昼間は調子に乗ってすみませんでした、と誰かに向かって謝り倒したくなった。
大の字に寝そべり手足を出す勇気など、何故そんな大それた事を考えたのだろうかと、がたがた震えながら、強気だった昼間の自分が木っ端微塵に潰えていくのを、頭の端で感じていた。
布団の周りに何か得体の知れないものが、ずりずりと蠢き、こちらを窺っている様で、産毛が総毛立ち肌がチリチリとする。
結界である布団から出た部分は、その何かがズルリと這いずり、ザラリと撫でつけ、挙げ句境界線からすぱりと持っていってしまう──そんな妄想に取り憑かれていた。
しかもそれはただの妄想ではなくて、古より細胞が記憶しているものなのかもしれない……という気すら、して。
思わず、天井から臍のあたりに垂れている電気の紐を、ぐいっと引っ張った。