嗤う布団
パッと瞬時に、部屋の隅々まで皓々と明かりがともる。
何かが跋扈していたとしても、古と違い、真の闇夜というものが無くなって久しい現代では、居苦しい筈。
何時でも好きなときに好きなだけ、照明器具を点けておけるようになったぶん、夜通し明るくしておく事も不可能ではないからだ。
だが暗闇は存在する。
どんなに明るくとも、否──明るければ明るい程、影なる部分は必ず出来る。黒々と。
すると明るかろうが暗かろうが、あまり意味を成さないのではないかという疑心が湧き上がる。
作られた影から、こちらを窺っているのではないか。
目を離した隙に、するりと忍び寄ってくるのではないか。
またはこちらが恐怖に負け、影を薄めようと明かりを点けに布団から出るのを、手ぐすね引いて待っているのではないか。
幸いにして、明かりの紐は、布団から手の届く位置にあるけれど。
もし手近なところに紐がなかったら、ぎゅっと目をつぶって恐怖をやり過ごし、布団にくるまって寝るという選択肢もあるだろう。
だが何故布団にくるまったくらいでやり過ごせると思うのか。
それは『布団が結界である』と本能的に察知しているからなのでは……などと妄想するのである。
それとも、昼間の目映さを思い出し、自分を護る結界であって欲しいという、願望なのか。