嗤う布団
怖がりな私は、三角形の布団を、是が非でも試してみたくなった。
漠然とした恐怖に打ち勝つのは、理性ではないにしろ、根拠を念頭に置くだけで随分と緩和されるように思う。
偽薬とわかっていても、所謂気の持ちようで、強く信じれば効能が期待出来るのではと、錯覚したくなるのだ。
いるかいないかわからない『何か』を恐れるよりも、何かが部屋に潜んでいるかもしれないという『恐怖心』を、『気のせい』と一笑に伏せられる材料を並べるか、または『恐怖心』をねじ伏せられるだけの『対抗策』を準備出来れば良いのである。
『これだけのことをしたのだから、よしんば何かがいたとしても、手出し出来る筈がない』と自分に強く言い聞かせるタネがあれば、恐怖心も収束させられるのではなかろうか。
布団がそんな大層な代物に成り得る筈もないが、己が怖がっているのをどこか隅のほうで冷静に見ていて、あまり大仰にならないもので済ませたいと思っている部分があるのかもしれない。