嗤う布団
しかし現実問題として、三角形の布団を用意するのは、容易ではない。
厳密には三角形と言えなくとも、代用として、普通の長方形の布団で三角を形作る事にした。
三枚の敷布団を、隅を合わせて重ね、三角形らしい形に敷く。
歪だし、だいぶ頂点が揃わないけれども、三角形と言えなくもない形が仕上がった。
早速真ん中に寝転んでみたが、足を伸ばした途端、カカトが畳にこする。
頭をギリギリの縁まで上げてみたが、やっぱり全身は伸ばせない。
それに寝返りをうつにも一苦労だし、尚且つ手を伸ばせない事も知り、三角形は断念した。
エネルギー保持が安定していたとしても、寝ている間に飛び出した腕をもっていかれたのでは話にならない。
三角形は普及しなかろう。
しかし他の多角形なら、どうだろう。
五角形や六角形……あまり角が多いと、布団を敷くのが大変だし、かといって1から作るのも、三角形さえ縫えなかった程に裁縫が苦手な私には、現実味のない考えだ。
それ以外に連想して浮かんだのは、星型のような五芒星や、更には三角を上下に重ねた六芒星だった。
勿論、どう転んだってそんな布団を用意出来る筈もない。
だったら──ふとある考えが脳裏を過ぎった。