嗤う布団


──何故、私はこんな事をしたのだろう。


ふと、冷静な思考が問い掛けてくる。


霊感があるわけでもなく、何かが起こる兆候を捉えたわけでもなんでもないのに。


──何故私は、こんな馬鹿馬鹿しい事を?


布団を円盤のようなかたちにしてみたり、シワで模様を書いてみたり、書いた模様が崩れぬよう気を配るなど。


正気さを欠く様な事は何一つ起っていないのに。ただ風邪とも思えぬ悪寒がした様な気がしただけで、まるでこの騒ぎは狂気の沙汰。


だが幾ら自嘲しても、長方形に戻そうとは思えなかった。


もしかしたら私は、四角い長方形の布団よりも、いまのような丸くした布団のほうが合っているのか。


布団は意識を手放す場所なのだから、長方形に限らず、人それぞれ安心する形であっても良いのではないか。


それならば、これだけの沙汰にも説明が付く気がする。

などと考えながら、うとうとと微睡む。



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