時を越えた日記
同窓会―――。

「これでいいか?」

友達に頼まれ、デビュー作に

サインをする。

「おい、見ろよ。我らが作家先生の

サインだぞ~。」

ほかの友達に僕のサインを見せびらかす。

「おい、やめろよ。」

「やめろって。」

「へぇ~、でもすごいよな~ほんとに夢

叶えたんだから。」

ほかの友達も言う。

「言っとくけど、こいつがデビュー

できたのは、俺が出版社にいた

おかげなんだからなぁ~。」

「で、新作はいつ出るんだ?」

「まぁ。そのうちな。」

作家としてデビューしたのは、もう

三年前、それ以来、一冊も本は出ていない。

当然それで食べていけるはずもなく、

工事現場でバイト。

それが現実。

ここから抜け出すためには、

新作を出すしかない―――。

同窓会の帰り道。

古本高価買取、と大きく書かれた本屋に

足を止める。

そこには、僕のデビュー作が三冊で

三百円で売られていた。

僕は、買って家に帰った。
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