il tablo d'estate
家に着いたら、もう4時過ぎだった。
だいぶ歩き過ぎた。
明日からもう当分は着なくて済むので、汗で湿ってしまったスカートを洗濯袋に突っ込んだ。
ざっとシャワーを浴びて、髪を乾かしていると、浴室の外で音がする。
顔だけ出すと、廊下の向こうに春樹叔父の姿が見えた。
「叔父さん、お帰りなさい。」
「ああ、ただいま。帰ってたんだな。今日でもう、学校おしまいだろう?」
「うん、そう。ちょっと待っててね。」
リビングに戻り、かばんの中から成績表を取り出し、コップに注いだ麦茶と共に春樹叔父に手渡した。
ありがとう、とコップを受け取り、一口二口飲みつつ、春樹叔父は大切そうに成績表を受け取った。
「姉さん達には見せたかい?」
「昼間にね、送ったわ。」
手近にあったクリップで半分濡れたままの髪を纏め上げた。
「お前は相変わらずはっきりしているね。いいものはいい、苦手なものはついに最後まで苦手なままなのかね。」
成績表を一通り見て、苦笑しながら春樹叔父は言った。
朝食の洗いものを手早く片付けながら(今朝は少し寝坊した。結局皿はそのままに家を出てしまった。春樹叔父は家事の一切をしない。出来ないのだ。)、わたしは叔父の、年「不相応」にすべすべとした頬を見ていた。そして真田のことを思い出した。
「叔父さん。」
「なんだい。」
「今日、友達を夕食に招待したいのだけど。」
うん、と春樹叔父は目を上げた。
「うん、友達?めずらしいね。そうか、じゃ、私は出かけた方がいいかな。」
わたそは首を振った。
「いたほうがいいと思うわ。」
蛇口を捻って、水音が止まった。
「男の人なの。しかもその人、今日の昼間に離婚したばっかり。わたしと知り合ったきっかけもナンパという、あまりいい説明が出来そうな友達じゃないのよ。」
「まあ確かに、あまり褒められた例とは言えないなあ。」
春樹叔父は穏やかに笑った。
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