三度目のキスをしたらサヨナラ
──年上。
その言葉に私は戸惑った。
ソウは、私のことを年上だと信じている。
そんなソウの隣にいることに気まずさを感じて、姿勢を変えようと体をまっすぐに起こそうとしたとき、ふと、手に冷たい感覚があるのに気づいた。
手元を見ると、そこにあったのはソウがジーンズのポケットから出したタバコとライター。
私の手に触れた冷たいシルバーのライターは、シンプルな無地のデザインで、下端に小さくアルファベットが刻まれている。
「これ、彼女からのプレゼント?」
「うん」
ソウは仰向けのままで頷いた。
ライターを手に取り、掘られたアルファベットを手でなぞる。
そこに刻まれているのは、K・A ・I の三文字。
「『カイ』って……ソウの本当の名前?」
「そうだよ。『海(うみ)』って書いて、『カイ』って言うんだ。……ミナさんは?」
私……?
私は何も言えずに、ただ目の前の海を見つめた。
その海面は、おだやかに揺れる波が太陽の光を受けてゆらゆらと輝いている。
「いいんだよ、言いたくなかったら。今、俺は『ソウ』で、ミナさんは『ミナ』なんだからね」
ソウの言葉は優しかった。
……そうだ。
ソウには、私の知らない『カイ』としての人生がある。
そして私も……。
私は、ソウと私の間に置かれたタバコをじっと見つめた。
私たちの間の、タバコひとつ分の距離。
それは、すぐそばに温もりを感じられるのに、そのままでは決して触れ合うことができない距離で。
手を伸ばせば簡単に相手に届くのに、そのわずかな距離の間にはお互いのいろんな事情が詰まっていて、なかなか手を差し出せなくて。
なぜか胸が苦しかった。
ソウに伝えたいことはたくさんあるのに、何ひとつ言葉にできない自分に腹が立って、
私は胸が押しつぶされそうになった。
その言葉に私は戸惑った。
ソウは、私のことを年上だと信じている。
そんなソウの隣にいることに気まずさを感じて、姿勢を変えようと体をまっすぐに起こそうとしたとき、ふと、手に冷たい感覚があるのに気づいた。
手元を見ると、そこにあったのはソウがジーンズのポケットから出したタバコとライター。
私の手に触れた冷たいシルバーのライターは、シンプルな無地のデザインで、下端に小さくアルファベットが刻まれている。
「これ、彼女からのプレゼント?」
「うん」
ソウは仰向けのままで頷いた。
ライターを手に取り、掘られたアルファベットを手でなぞる。
そこに刻まれているのは、K・A ・I の三文字。
「『カイ』って……ソウの本当の名前?」
「そうだよ。『海(うみ)』って書いて、『カイ』って言うんだ。……ミナさんは?」
私……?
私は何も言えずに、ただ目の前の海を見つめた。
その海面は、おだやかに揺れる波が太陽の光を受けてゆらゆらと輝いている。
「いいんだよ、言いたくなかったら。今、俺は『ソウ』で、ミナさんは『ミナ』なんだからね」
ソウの言葉は優しかった。
……そうだ。
ソウには、私の知らない『カイ』としての人生がある。
そして私も……。
私は、ソウと私の間に置かれたタバコをじっと見つめた。
私たちの間の、タバコひとつ分の距離。
それは、すぐそばに温もりを感じられるのに、そのままでは決して触れ合うことができない距離で。
手を伸ばせば簡単に相手に届くのに、そのわずかな距離の間にはお互いのいろんな事情が詰まっていて、なかなか手を差し出せなくて。
なぜか胸が苦しかった。
ソウに伝えたいことはたくさんあるのに、何ひとつ言葉にできない自分に腹が立って、
私は胸が押しつぶされそうになった。