三度目のキスをしたらサヨナラ
二度目のキス
胸に鈍い痛みを感じながら黙って景色を眺めていると、突然ソウが立ち上がった。

「ミナさん、寒くない?」

いくら今年の冬が記録的な暖冬で、まるで春のように暖かい太陽の日差しが降り注いでいるとしても、ここは2月の海。
寒いことに変わりはない。

実際、私の足の先は冷たくなりはじめていた。

「うん。ちょっと寒いね」

「だったら」

ソウは少し前かがみになって、私に手を差し出した。

「そろそろ移動しよう。このままじっと座ってたら風邪ひくよ」

「でも……」

思い出すのは、ここに上ったときに感じた高さへの恐怖。

ソウは灯台まで、防波堤の上を歩くつもりだ。

その距離はまだ20メートル以上あった。

「大丈夫だって、絶対ミナさんの手を離さないから」

「……うん……」

怖かったけれどこのままここにいて凍えるのもイヤで、私は仕方なくソウの手を取った。

だけど。

ほんの数10センチ視界が高くなっただけなのに、そこに広がっているのはまるで違った景色で、私は小さな悲鳴を上げた。

思わず足元がふらついてバランスを崩しそうになると、ソウが後ろからしっかりと私の身体を支えてくれる。

「この防波堤、絶対高すぎるって! 落ちたらどうするの……」

「防波堤なんだから、高くないと意味がないよ。ほら、俺を信じて」

「……うん」

怖いのに、ソウに言われると何故か安心できる。

私はソウに手を引かれながら、灯台へ向かって歩き始めた。

ソウが前を歩き、私はその斜め後ろをついていく。

時折冷たい風が吹きつけると、ソウは振り返って「怖くない?」と私を気遣ってくれた。

私はそのたびに、小さく「うん」と頷いた。
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