三度目のキスをしたらサヨナラ
私がため息をつくと、

「それだけソータさんがいい男だってことでしょ。それはミナさんが一番良く知ってるんじゃない?」

「どうかな……」

「いつも周りにチヤホヤされて綺麗な言葉ばっかり貰ってた佐和子さんだからこそ、ソータさんの男っぽさに惹かれたんだと思うよ。それに……」

ソウは真顔で私の顔を覗き込んだ。

「ソータさんっていい男だと思うよ。だって人を見る目があるし。ね、ミナさん」

ソウは平然とそんなことを言う。
私は恥ずかしくて一言「バカ……」と呟くと、佐和子の話を続けた。


「話、続けるね──」


私たちが生まれ育ったのは、東京近郊の小さな田舎町。

蒼太は私たちよりひと足先に町を出て、東京の大学へ進学した。

……私が沖縄でプロポーズされたのはその年のことだ。

「だけど佐和子は、それでも蒼太を忘れなかったの」

そして翌年。

私が蒼太とは違う大学を選んだ一方で、佐和子は蒼太と同じ大学へ進んだ。
そして、再び陸上部のマネージャーとして蒼太のそばに舞い戻ってきた。

佐和子の実家は、地元では有名な老舗旅館を営んでいる。
その旅館の跡取りでもある佐和子は、親の反対を押し切って東京へ出てきたのだ。

「なかなかやるね、佐和子さん」

「うん。……私も、その時に少しは危機感を持てば良かったんだけどね」

だけど、私は心のどこかで『蒼太が佐和子に傾くはずはない』って、余裕を持っていた。

──それが間違いだった。

2人が再会してから1年半後。

蒼太は佐和子と関係を持つようになってしまった。
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