三度目のキスをしたらサヨナラ
ソウは大きくひとつ深呼吸した。

そして頭を垂れ、私の髪に触れていた手を車のワイパーレバーに伸ばし、下から上へと押し上げた。

今までずっと、一定のリズムを刻み続けていたワイパーの動きが止まる。

私はフロントガラスに目をやった。

撥水コーティングが施されたフロントガラスには次々と小さな雨の粒が張り付き、一面に不揃いな水玉模様を作り出す。

そして隣り合った小さな雨粒同士は、結びつき、ひとまわり大きな珠になったかと思うと、最後は車の屋根から伝う雨の滴とともにその形を崩しながら流れ落ちていった。

それは、ほんの数秒の出来事なのに、まるでスローモーションの映像を見ているようだった。

こうしてできた無数の雨の軌跡はフロントガラスを覆うカーテンとなり、
車内に響くのはエンジン音と叩きつけるような雨音だけ。

──あっという間に私たちは外の世界から遮断された。



「…………な……だ……」



ソウが何か呟いたけれど、雨音が邪魔をして私にはよく聞こえない。

「え? 何?」

だけどソウは小さく笑っただけで、その答えを教えてはくれなかった。


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