三度目のキスをしたらサヨナラ




だけど。

振り返っても、どこにも、ソウはいなかった。

始発までまだ少し時間のある駅の構内には、私と駅員以外誰もいない。



──本当に、これでおしまい。



私は、自分の嗚咽で我に返り、そこで初めて自分が泣いていることに気がついた。

「……う……っ……」

誰も来ない駅の入り口を見つめていると、次から次へと涙が零れ落ちる。


私は自問自答していた。


私はどうして泣いているの?

蒼太を失ったのが、そんなに悲しいの?

それとも、ソウとの別れが辛いの?




その答えを迷う必要はなかった。

今、私の頭に浮かぶのは、たった一人だけ……。


私は溢れる涙を拭った。


ねえ、ウーさん。
私、大丈夫みたいだよ?

4日前には、もう恋なんて二度と出来ないって思っていたのに、
今、こうしてまた、誰かを思って胸を焦がしている。


──私、ソウに恋をしていたんだ。


私は俯いて目をぎゅっとつぶると、大粒の涙を絞り出した。
涙は泥で汚れた私の靴の上に、ゆっくりと落ちていく。

再び前を向くと、涙を零したぶんだけ、視界が少しだけ明るくなった。


私は精一杯の笑顔を作って、呟いた。


「バイバイ、ソウ」

今日、とびきりの笑顔をあなたに見せてあげられなくてゴメンね。




そして私は、思い出の場所に背中を向け、改札をくぐった。



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