三度目のキスをしたらサヨナラ
──以前とは変わったこと。

それは、多華子と無理せず話ができるようになったことだ。


ソウと別れた日、多華子は寝ずに私の帰りを待ってくれていた。

明け方、泣きながら家に帰り着いた私を黙って迎え入れてくれた多華子は、お風呂に温かいお湯を張り、私がお風呂に入っている間に泥だらけになった服と靴を洗ってくれた。

それから、お風呂から出ると温かいココアを入れてくれた。

そして、蒼太のこともソウのことも、その日あったことを全て聞いてくれたあとは、一緒に涙を流してくれた。


私と多華子の間にあった、ソウと出会う前のぎこちなさは、その日を境にすっかり消え去った。


「元に戻れて良かったよ」

私がそう呟くと、多華子は私にこういった。

「元に戻ったんじゃなくて、もっと仲良くなれたんだよ」

嬉しそうに、照れくさそうに。

「それって、ソウくんのおかげだよね」

その時の多華子の笑顔を、私は今でもしっかりと覚えている。




多華子と大和くんを見送り、リビングに散らかった多華子のセーターを片付けると、
次は私が出かける番だ。

今日はバイトは早番、ランチタイムの忙しい時間帯だ。

だけど忙しく働いている方がいい。
余計なことを考えずに早く時間が過ぎてくれるから──。


私は急いで支度をすませると、慌ただしく家を出た。

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