三度目のキスをしたらサヨナラ
知らなかった。
新幹線で移動中の2人が電話で話をするということが、こんなに大変だったなんて。


トンネルに入るたびに『圏外』と表示される携帯の画面を見る度に、私の心はくじけそうになった。

呼び出し途中で切れてしまったり、うまくつながっても声が途切れて全然話にならなかったり。

きっとソウも同じように私に電話をかけてくれているんだろう。
ソウの携帯が話し中になっていることもあった。

だけど、それでもソウにつながるタイミングを逃したくなくて、私は電話をかけ続けた。



そして、ようやくまともな会話が出来る状態で電話がつながった時には、既に20時を過ぎていた。


それはどちらからかけた電話だったんだろう?

リダイヤルボタンと通話ボタンを繰り返し押し続けていた私には、それすらもよく分からなかった。


私が電話に出ると、すぐにソウのはっきりとした声が聞こえてくる。

「ミナさん、今、どこにいるの?」

「あのね! 私も新幹線で、そっちに向かっているの!」
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