三度目のキスをしたらサヨナラ
暫く私たちの間に静かな時間が流れた後、先に口を開いたのはソウだった。

「ねえ、ミナさん」

ゆっくりとソウの胸から顔をあげると、そこにいつもの笑顔はなかった。

その代わりに、ソウは、穏やかだけどとても真剣な表情で私を見つめていた。

「お願いがあるんだ。少しだけ、俺に時間をくれない?」

ソウの両手が、痛みを感じるほど強く私の肩を抱く。

「俺ね、N大の試験……駄目だったんだ」

「え……?」

「仕方ないよね、あれだけ遊んでたんだから」

私は言葉を失った。

試験の翌日、ソウは『ばっちり出来た』って言っていたのに──。

「明後日、もうひとつのK大の合格発表があるけど、これも微妙でね。……だから、もしダメだったら、来月残ってる2次試験を受けようと思ってるんだ。こっちは定員も少なくて、かなり厳しいけど」

ソウの話を聞きながら、私はあまりにも綺麗なソウの瞳に吸い込まれそうになった。

笑ったり涙を浮かべたり、
見つめられると息が止まりそうなほど色っぽかったり、
時には苦しそうだったり……。

私はこれまで、いろんな表情を見せるソウの瞳にドキドキさせられ続けてきた。

だけど、こんなに真剣で、まっすぐに見つめられるのは初めてで……。

そんな表情は、ソウの固い決意を物語っていた。

「俺、今度は死にものぐるいで勉強するよ。そして絶対大学に合格して、自信を持ってミナさんのこと迎えに行くから。──だから、少しだけ、待っててくれない?」

ソウは私の肩を抱いたまま、その頭を深く垂れた。

それはまるで、私に懇願するような仕草だった。
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