三度目のキスをしたらサヨナラ
「あなた、オトナの女性って感じだもんね。……母性本能ってやつなのかな?」

「違う、そんなんじゃない」


このままあと数10メートルも直進すれば、歩道は途切れて信号機のある広い横断歩道に出る。
そのすぐ先は、地下鉄の入り口。

──そこまで行けば、彼とはサヨナラだ。


「……あれは、私だったの」

「え?」

「私も先月失恋して、あのお店で泣いたの」

……あのとき、私を助けてくれたのはウーさんだった。

ただ、私の前に置かれたのは、
冷えたビールではなくて、オレンジジュースと酸っぱいキムチの特盛りだったけど。

「……まるであのときの自分を見てるみたいだったの」

そうだ。

私は、彼の姿を見ていて、あのときの私がまだウーさんのお店の中を彷徨っているような気がしたんだ。

私は、彼を慰めたかったんじゃない。
1ヶ月前の自分を助けてあげたかったんだ……。


「そうかー」

彼は小さく呟いた。

「俺たち、似た者同士だったんだね」

私は何も言葉を返さず、ただ前を見て歩き続けた。

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