三度目のキスをしたらサヨナラ
一度目のキス
なんとなく次の会話がないまま無言で歩いていると、数軒先の居酒屋から学生の集団が出てきた。
ここは幾つもの大学のキャンパスが建ち並ぶ学生街。
駅周辺には飲食店が軒を並べ、早朝から深夜まで学生の出入りが絶えることがなかった。
その学生たちはかなりお酒が回っているようで、赤い顔をして大きな声で何か叫びながら、こちらへ向かってくる。
その人数は10人以上、すべて男だ。
歩道は狭い。
大人が2人横に並べば歩道はいっぱいになり、追い越したりすれ違ったりすることは難しい。
──イヤだな、と思った時だった。
「ちょっと、我慢して」
彼はそう言うと私の右肩を抱き、車道と反対のビル側へ寄って学生たちに道をあけた。
ビルの方を向いたまま目を合わさないようにそれをやり過ごしていると、タバコとお酒と油の入り混じったイヤなにおいが辺りに広がって鼻をついた。
「ヒュー」という古くさい冷やかしの声が聞こえる。
私の肩を抱く彼の手にさらに力が加わった気がして、私は少しだけ痛みを感じた。
そして、彼の身体が触れた私の左半身に、彼の温もりを感じた。
ここは幾つもの大学のキャンパスが建ち並ぶ学生街。
駅周辺には飲食店が軒を並べ、早朝から深夜まで学生の出入りが絶えることがなかった。
その学生たちはかなりお酒が回っているようで、赤い顔をして大きな声で何か叫びながら、こちらへ向かってくる。
その人数は10人以上、すべて男だ。
歩道は狭い。
大人が2人横に並べば歩道はいっぱいになり、追い越したりすれ違ったりすることは難しい。
──イヤだな、と思った時だった。
「ちょっと、我慢して」
彼はそう言うと私の右肩を抱き、車道と反対のビル側へ寄って学生たちに道をあけた。
ビルの方を向いたまま目を合わさないようにそれをやり過ごしていると、タバコとお酒と油の入り混じったイヤなにおいが辺りに広がって鼻をついた。
「ヒュー」という古くさい冷やかしの声が聞こえる。
私の肩を抱く彼の手にさらに力が加わった気がして、私は少しだけ痛みを感じた。
そして、彼の身体が触れた私の左半身に、彼の温もりを感じた。