三度目のキスをしたらサヨナラ
手をつないでいるわけでもない。
抱きしめられているわけでもない。
ただ、お互いの唇だけが、私たちをつないでいた。
触れ合った唇から、彼の温もりが伝わってくる。
そして、優しさや、悲しさも。
それは、一度ゆっくりと瞬きをするだけの短い時間の出来事で、彼の唇はすぐに私から離れていった。
彼は、
「ねぇ、2人で泣いたら、寂しさも半分になるかな?」
と笑った。
「……どうだろうね」
似た者同士の私たちは、
泣きながら、
笑いながら、
静かに抱き合った。
遠くで聞こえる、足音や人の話し声。
鳴り響く構内アナウンス。
そして、大きな振動とともに地下を走り抜ける電車の音。
その音にかき消されるような小声で、彼が
「ミナ」
と呟いたのを、私は聞き逃さなかった。
……だけど私は黙って、再び彼の腕の中で目を閉じた。