三度目のキスをしたらサヨナラ
恋の仕方を忘れた女
【2日目・2月16日】


大学は既に長い春休みに入っていた。


今日はバイトも休みで、何も予定が入っていない。

昨晩目覚まし時計をセットせずに寝たせいで、目が覚めたのはお昼前だった。

私は、身体をゆっくりと起こすと、ベッドの上で大きな背伸びをひとつした。


──昨日、あの後。

お互いの気持ちが落ち着いたのは終電前だった。

彼は改札口まで私を見送ってくれた。

そして、相手の名前も連絡先も聞かないまま、「じゃあね」と言って手を振って別れた。


彼が昨日呟いた「ミナ」とは、彼女の名前なんだろう。

私と同じ名前だなんて、なんて偶然。

だけど、なぜか私はそれを彼に言い出せなかった。


(いいじゃない、別に。もう二度と会うことはないんだし)


そう思うと少し寂しい気もしたけれど、心のどこかでホッとしていたのも事実だった。


今まで、蒼太のことで、人前で泣いたことはほとんどなかった。

ウーさんの前でも、あんなには泣けなかった。


私は自分の唇にそっと触れた。

……あんなに穏やかなキスをしたのは初めてだった。

あのキスの瞬間、確かに、私の悲しみが和らいだような気がした。

『2人で泣いたら、寂しさも半分になるかな?』

そんな彼の言葉は、案外嘘じゃないのかも知れない。
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