三度目のキスをしたらサヨナラ
私の話を静かに聞いていたウーさんは、濡れた手を自分の割烹着で拭き、ゆっくりと厨房から出てきた。

「そんなこと言ってるんじゃ、まだまだだな」

そして、ウォーターサーバで2つのグラスに水を注ぐと、片方のコップを私の目の前に置きながら、私の隣に腰掛けた。

「なぁ、ミナちゃん。『恋はするものじゃなくて落ちるもの』って、聞いたことない?」

「……え?」

「使い古された言葉だけどな。恋なんて、何も知らなくても、したくなくても、するときゃするものなんだよ」

ウーさんは自分のグラスの水を一口飲んで続けた。

「逆に言えば、『恋をしよう』と思って始める恋なんて、ろくなもんじゃないってことだ」

「……」

「まぁ、ドキドキするだけが、男と女じゃないしな」

ウーさんは自分の台詞に少し照れたようで、頬を赤く染めながら、自分の持っているグラスを傾けて私のグラスに軽く当てた。

「意外にロマンチストだよね、ウーさんって」

「ほんとにミナちゃんは一言多いよな」
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