三度目のキスをしたらサヨナラ
そんな話の途中で、彼は足を止めた。

「ねえ。ここなんて、どう?」

目の前にあるのは、1軒のイタリアンレストランだった。

この通りは歩きなれた大学への道だ。
それなのに、こんなにじっくりとこのお店を見るのは初めてだった。

コンクリートのビルが立ち並ぶなかでひときわ目立つ、暖かみのある黄色い壁と木目調の大きなドア。
入り口に置かれたチョークアートの施された手作りのメニューボード。

こじんまりとしているが洒落た雰囲気の店構えは、いかにも若い女性に人気がありそうだ。

……だけど。

私はもう少し先に見えている、派手な原色の赤い幟がはためく店を指差した。

「私、あっちのほうがいいんだけど」

私が指差した先にあるのは、牛丼のチェーン店だった。

「え?」

彼が驚いた顔をして私を見た。

「……あそこでいいの?」

「うん。気を使わなくてすむし」

それに、こういうおしゃれなお店はデート向きで、今の私たちには似合わない気がした。
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