三度目のキスをしたらサヨナラ
私たちが行き着いたのは、全面ガラス張りで、外から店内の様子が丸見えの牛丼店。

窓には、ちょうど座ったときの目線の高さに、すりガラス模様のシートが申し訳程度に張られていたが、目隠しの効果はほとんどなかった。

店内は半分程度の席が埋まった状態だ。

その中で、学生やサラリーマンと席を並べて牛丼を食べる私たちがこんな馬鹿げた会話を交わしているなんて、誰が想像できるだろう?


「まずは、目的ね。これは失恋の傷を癒すためでいいよね?」

「うん」

注文した後、待つことなくすぐに出された牛丼を食べながら、私たちは《ゲーム》のルールについて話をした。

「それで、どうしても辛くて泣きたくなったら、キスして慰めてもらおう」

──昨夜のような慰めのキス。
寂しさを半分にしてくれるキス。

それが《ゲーム》の勝敗になる。

「どんな手段を使ってもいいから、相手を泣かせるんだよ。辛くなって『キスして』って言ったほうが負け」

「でも、それだと、全然癒されないと思うんだけど」

「いいんだよ、癒されるのはキスのときだけで。俺たちはもっと強くならないといけないんだから」

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