三度目のキスをしたらサヨナラ
「だけど、わざと相手を傷つけてもいいの?」

「もちろん! だってこれはゲームだからね。それに俺たちは、どんなことを言われても、恋人のことを思い出して胸が苦しくなっても、それをしっかり受け止められるようにならないと」

……だから。
キスは、相手を傷つけたあとのフォローなんだ。

相手を陥れるようでいまいち気が乗らなかった私は、自分にそう言い聞かせた。

彼は頬張っていた牛丼を飲み込んで、話を続けた。

「だからって、辛い気持ちをごまかしたり、泣くのを我慢するのは反則」

「それって難しくない?」

「んー。でも、きっとできるよ。そんな気がしない?」

彼の話を聞きながら赤だしの味噌汁を口に含むと、それはかなりしょっぱくて、私はすぐに水を飲みなおした。

「今の、塩辛かった?」

それを見ていた彼が言った。

「うん」

「そう思ったら、その気持ちを素直に言えばいいだけだから。簡単だよ?」

「……そうだね」

「そうじゃないとゲームは成立しないし」

でも、ゲームじゃなくても、無理するのはよくないことだよ、と彼は笑顔で付け加えた。

失恋で傷ついているとは思えないくらいの穏やかな表情で……。
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